全住宅をつなぐ、本社イベント担当の仕事とは

──まずはイベント担当の役割について教えてください。

Eさん:
私たちは本社の運営統括部 運営推進部に所属し、主に全住宅を横断する大規模イベントの企画・運営を担っています。

当社では一般財団法人グランクレール文化基金を活用し、「グランクレール」シリーズご入居者の充実した生活の実現のため、様々なイベントを開催しております。各住宅のイベント予算では難しい企画も、この基金を活用することで実現しています。私たちはその窓口として、会社全体のイベントの方向性を考え、形にする役割を担っています。

Mさん:
全住宅横断のイベントでは、「当社ならでは」の企画を生み出すことを大切にしています。今年度の事例では狂言会や社内川柳イベントなど、独自性のある取組を企画し、出演者との交渉や予算管理、当日の運営設計、さらには各住宅への横展開の仕組みづくりまで一貫して担います。

外部に任せきりにせず、自分たちの手で内容を組み立て、ご入居者に寄り添った形に仕上げていくことも、私たちの重要な役割です。

左からYさん、Mさん、Eさん

全住宅で“同じ感動”を届けたい

──各住宅で開催されるイベントが日常的にある中、なぜ全住宅横断的な企画を開催することになったのですか?

Mさん:
きっかけは、「一部の住宅だけでなく、全住宅で同じように愉しめるイベントを実現したい」という思いからでした。

住宅ごとに工夫してイベントは実施していますが、どうしても住宅の立地や雰囲気、担当者の経験値などによって、見え方やクオリティに差が出てしまうことがあります。そこで、本社主導で一定のクオリティを担保し、全住宅で共有できる仕組みをつくれないかと考えました。

Eさん:
イベントは住宅運営の中で潤沢な予算がある分野ではありません。各住宅だけでは実現が難しい企画も、本社のネットワークや東急グループとの連携を活かすことで可能になります。全住宅向けの大規模な企画を通して、会社全体の価値を高めたいという思いもありました。

Yさん:
本社と現場が連携することで、クオリティを安定させながら各住宅の負担も軽減できます。横断イベントは、そうした補完の役割も担っています。

Mさん:
さらに、文化基金を活用した大規模イベントは、ご入居者からの寄付ご賛同につながっています。
ご自身の寄付が形になり、多くの方に喜ばれている様子を見ることで、「参加してよかった」「応援してよかった」と感じていただける場にもなっています。イベントは、会社とご入居者との信頼関係を深める機会にもなっていると感じています。

Eさん:
寄付をいただく以上、それにふさわしい質を維持する責任があります。ただ、毎回、過去最高を目指すというよりは、軸となるクオリティを維持し続けることが大切だと考えています。

そのうえで、東急グループとしての強みを活かした連携は欠かせません。グループ力があるからこそ実現できる舞台や会場があります。それは競合他社にはない、大きな差別化ポイントだと思っています。

立場にかかわらず愉しむ、東急イーライフデザインの川柳イベント

──住宅をまたいだ企画の一つとして、川柳イベントが好評と聞いています。その内容について教えてください。

Mさん:
川柳イベントは「とうきゅうクレール川柳」として、2024年度から開始した「グランクレールらしい魅力づくり」の一環として始まった全住宅横断の企画です。
もともとは当社事業のカルチャースクール「ホームクレール」で行っていた講座がきっかけで、「川柳がこれほどシニア世代に人気なのか」という気づきから、当時の社長の一声で全住宅イベントへと広がりました。

川柳は、短歌や俳句に比べて敷居が低く、介護が必要な方も含めてどなたでも参加しやすいのが魅力です。2024年度にスタートし、すでに恒例行事として定着しつつあります。

川柳イベントでは、初回からご入居者はもちろん、「ホームクレール」地域会員の方、当社の社員全員を参加対象とし、会社全体で参加できるイベントとしております。毎回100名以上がご参加され、スタッフでも受賞がおります。東急イーライフデザインに関わる人たちが、立場を超えて一緒に愉しめる企画になっていると感じています。

Eさん:
先日実施した第二回「とうきゅうクレール川柳」では、延べ330句の応募があり、表彰式は本社にて開催しました(第一回は「ライフニクス高井戸」にて開催)。
当日は、各住宅と表彰式会場をオンラインで繋ぎ、ご来場が難しい方への表彰も画面を通じて行いました。中には、住宅から画面越しでうちわを持って、表彰式会場にいる受賞者の応援をされる姿も見られました。

Yさん:
応募者の中には、普段から川柳を嗜んでいる方もいらっしゃいますが、「今回が初めての挑戦」という方も多くいらっしゃいました。裾野の広さも、この企画の魅力だと思います。

審査は、講師に加え、社長や管理職、各住宅の支配人などが参加し、それぞれの視点で投票する形で行いました。川柳が得意かどうかに関わらず、「面白い」「心に響いた」という感覚も大切にしています。

Mさん:
印象的だったのは、作品の背景にあるお一人おひとりの人生です。毎回テーマを設定しており、第二回のテーマは「いのち」「いごこち」「いきいき」でした。

表彰式では、講師が句に込められた思いを想像しながら解説してくださいます。実際に作者の方に思いを伺う場面もあり、涙を流される方もいらっしゃいました。

講師はよく「皆さまの人生そのものを表現していただきたい」とおっしゃいます。川柳は、日々の出来事やご家族様への想い、これまでの歩みを言葉にする機会です。特に介護住宅では、ご自身の思いを外に出す機会が限られることもありますが、川柳を通して心を表現できる場になっていると感じています。

また、川柳はご入居者が主体となるイベントです。狂言会のように私たちが主導する企画とはまた違った盛り上がりがあります。

Yさん:
川柳イベントは、本当に多くの反響をいただいています。入賞された方には表彰状やトロフィー、ギフトカタログ、そして作品が掲載された冊子をお届けしています。「まだ届かないの?」と愉しみに待ってくださる方もいらっしゃるほどで、それだけ心待ちにしてくださっているのだと感じました。

参加者全員に記念のボールペンをお渡しするなど、「参加した証」が形として残る工夫もしています。そうした細やかな仕掛けも、とても喜んでいただいています。

東急のグループ力を活かした「狂言会」

──先日行われた狂言会のイベントについても教えてください。

Eさん:
狂言会は、東急グループの東急文化村とタイアップし、渋谷・セルリアンタワー内の能楽堂を貸し切って開催しました。

これまでエリアごとに大規模イベントを実施することはありましたが、全住宅のご入居者が一堂に会する形での開催は初めての試みでした。東急グループのネットワークを活かせたことも大きなポイントです。こうした機会を創出できるのは、本社横断のイベント担当ならではの役割だと感じています。

Mさん:
「東急」というブランドは、ご入居者の皆さまにとって特別な存在だと感じています。東急不動産グループの住宅で開催すること自体に価値を見出してくださる方も多く、「東急グループの住宅に入居してよかった」と思っていただける瞬間にもなっているのではないかと思います。
会場は本格的な能楽堂で、貸し切り公演という特別感もありました。当日は皆さまおめかしをされて、お着物でいらっしゃる方もいました。そうしたハレの日を演出することも、このイベントの大切な要素です。

Yさん:
大規模イベントだからこそ、裏側の準備は非常に多岐にわたります。会場手配や契約関係、タイムスケジュールの作成、送迎体制の整備など、安全に実施するための調整が数多くあります。

特に今回は、介護住宅のご入居者も含めてご参加いただきました。車椅子での移動や動線の確保など、細かな配慮が必要でしたが、担当者全員で協力しながら体制を整えました。

Mさん:
シニアの皆様にとって、お仲間で一緒に外出する機会は、年々ハードルが高くなります。だからこそ、送迎付きで本格的な舞台を鑑賞できる体験は、特別な時間になります。
「この日があるから新しい洋服を用意しようかな」といった前向きな気持ちも生まれますし、日常にメリハリが生まれます。文化に触れることが、心身の活性化につながると私たちは考えています。

準備は大変でしたが、本社スタッフが多数関わり、「参加してよかった」という声を多くいただき、これまでの中でも特にクオリティの高いイベントが実現できたという手応えがあります。私たちにとっても、大きなやりがいを感じた取組でした。

狂言会で披露された「神鳴(かみなり)」

イベントで住宅のブランド価値を高める

──どのような観点・方針をもとにイベントの企画や運営に取り組んでいますか。

Mさん:
本社で担っている全住宅横断の企画は、一般的に言われる「高齢者施設のレクリエーション」とは少し立ち位置が異なるものだと考えています。

高齢者住宅を運営する会社ではありますが、「こんな華やかなイベントもやっているんだ」と感じていただけるような取組を意識しています。ご入居者はもちろん、ご家族様や、これからご入居をご検討の方、これから入社を考えている方にも、「この会社で働くのは面白そう」「ここなら誇りを持てそう」と思っていただけるような企画を目指しています。

手作り感のあるアクティビティには温かみという良さがありますが、それとは別に、プロによる本格的な舞台や文化的価値の高い企画を織り交ぜることで、日常にメリハリをつけることも大切です。それがブランド価値を高める一助になるとも考えています。

Yさん:
限られた予算の中でも、できるだけプロフェッショナルな表現や演出を取り入れ、クオリティを落とさない工夫をしています。背景演出やステージ設計、細かな運営体制の整備など、見えにくい部分こそ丁寧に整えることで、全体の完成度が高まります。

Eさん:
二人が言ってくれたことも含め、私たちが大切にしているのは、「関わる人すべてが愉しめる仕組み」です。全住宅横断のイベントでは、ご入居者だけでなく、本社スタッフや各住宅のスタッフも前向きに関われる設計を意識しています。住宅ごとの特性や強みを活かせる構造にすることで、全社としての一体感が生まれます。

また、地域資源の活用や地域との連携強化も重要な視点です。東急グループとしての強みを活かしながら、「当社ならでは」の企画を形にしていくことが、本社イベント担当の役割だと考えています。

娯楽を通じて、人生に関わる

──イベント担当に求められる素養や考え方はどのようなものですか?

Mさん:
まず大前提として、「人が好き」「愉しむことが好き」「誰かを愉しませることが好き」という気持ちがあることだと思います。
イベントは華やかに見える部分もありますが、実際には調整や準備など地道な作業も多い仕事です。正直に言えば大変なこともあります。それでも「その先にある笑顔を見たい」と思える人であれば、きっと向いていると思います。

Eさん:
当社は高齢者住宅を運営していますので、イベントは単なる娯楽ではありません。ご入居者の心身の健康維持や孤立の防止、さらには寿命の延伸にもつながる大切な取組だと考えています。その視点を持って企画することが求められます。

実際に、イベントの時間にご入居者の表情がふっと変わる瞬間があります。「こんなに笑ったのは久しぶり」「感動して涙が出た」といったお声をいただくこともあります。そうした変化を生み出せることが、私たちの大きなやりがいです。

Yさん:
私たちは、イベントを「生活の彩り」だと考えています。住宅での生活は、どうしても穏やかな日常が続きます。ご高齢になると、以前のように予定が立て込むことも少なくなってきます。

イベントでの挨拶の際も、「お忙しい中ありがとうございます」とはあえて言わないようにしています。日々が比較的ゆったりしているからこそ、イベントによって予定が増えることが、生活に張り合いを生むと考えているからです。「何月何日にあのイベントがある」という張り合いで、毎日が少し愉しみになります。ときめきやワクワクを届けること。それがイベント担当の使命だと感じています。

Eさん:
また、当社のイベントは、いわゆる「シニア向け」に寄せすぎないことも意識しています。

ご入居者の多くは、学ぶ意欲や意識が高く、「まだまだ挑戦したい」という前向きな方ばかりです。そのため、「高齢者向けだからこうする」という発想ではなく、時代に合った新しい企画を考えることを大切にしています。その視点を持てることも、イベント担当には重要です。

Mさん:
実際にイベントをきっかけに、「『グランクレール』シリーズに住みたい」と感じてくださる方もいらっしゃいます。イベントが入居動機につながるとも言えるということですね。ライフデザイン部(営業部)とも連携し、イベント開催日に見学会を行うこともあります。イベントは、ご入居者の満足度向上だけでなく、住宅の価値やブランドを伝える機会にもなります。

だからこそ、「自分の仕事が会社の価値につながっている」と実感できる方に、ぜひ関わっていただきたいです。

次に描く、全住宅イベントの未来

──今後のイベントについて、現時点でどういった予定がありますか?

Mさん:
仕掛けていきたいことはたくさんありますが、今は少しずつ広げていく段階だと考えています。
これまで狂言会や川柳など、文化系のイベントが中心でしたが、今後はオンラインを活用し、介護住宅にお住まいの方も参加できるような運動系の企画にも挑戦したいと思っています・

Eさん:
全住宅横断の企画は魅力的ですが、増やしすぎると各住宅で行っている日常のアクティビティとのバランスが崩れてしまう可能性もあります。
出席率が分散したり、運営側の負担が大きくなったりすることも考えられます。そのため、無理に数を増やすのではなく、ジャンルを変えながら年に数回、計画的に実施していく方針を大切にしています。

Yさん:
オンラインの活用は、今後さらに可能性が広がる分野だと感じています。
オンライン参加には当初抵抗のある方もいらっしゃいましたが、サポートや操作指導を重ねることで、今では自然に参加してくださる方が増えてきました。IT機器の活用も、イベントを通じて前向きに受け入れていただいていると感じています。

Mさん:
私たちは、「他社がまだやっていないこと」を取り入れていきたいと常に考えています。そのためにも、世の中で話題になっているものや新しいサービスは、自分たちで必ず体験します。そして「『グランクレール』シリーズのご入居者に合うかどうか」「ワクワクできる愉しみがあるか」をイメージしながら企画に落とし込みます。

保守的にならず、好奇心を持ち続けることが大切です。新しいものがあればまず試してみる。その姿勢を忘れずに、文化・運動・オンラインなどさまざまな切り口を組み合わせながら、全住宅横断で愉しめる企画を今後も検討していきたいと思っています。
※本記事に掲載されている情報は、2026年2月16日時点の情報です。

関連する記事

関連するキーワード