プロフィール│町田 久美

武蔵野美術大学教授。多摩美術大学絵画科日本画専攻卒業。2008-2009年、文化庁新進芸術家海外留学制度でデンマークに滞在。主な展覧会に、西村画廊(2005年-)、「KumiMachida」(2008年、ケストナーゲゼルシャフト、ドイツ)、「Kumi Machida ことばを超えて語る線」(2008年、高崎市タワー美術館)、「Japanorama. A new vision on art since 1970」(2017年、ポンピドゥ・センター・メッス、フランス)、「TOKYO:ART&PHOTOGRAPHY」(2021年、アシュモレアン美術館、イギリス)、「町田久美作品展ー1本の線ー」(2022年、小松市立本陣記念美術館)、「浮世絵現代」(2025年、東京国立博物館表慶館)など。主な収蔵先に、東京都現代美術館、ニューヨーク近代美術館など。主な作品集に「町田久美画集」(2012年、青幻舎)、「町田久美画集 五夜」(2021年、芸術新聞社)などがある。

第2回 Life Design Art コンペティション開催が決定

「Life Design Art」は、東急イーライフデザイン、東急不動産、チャーム・ケア・コーポレーションの3社が共同し、シニアライフの充実と若いアーティストの育成支援を目的に発足したプロジェクトです。

2025年に開催された第1回のコンペティションでは、651点もの応募が集まり、多方面から大きな反響を呼びました。
多数の好評を受け、このたび「第2回 Life Design Art コンペティション」の開催が決定しました。

第2回のテーマは、「居場所の記憶」。
今回も、シニア住宅での豊かな暮らしの実現や若いアーティストが才能を開花させる機会として、期待が寄せられています。

▼「Life Design Art」公式ページはこちら
 第2回コンペティションの作品応募期間は【2026年10月13日(火)~11月29日(日)】です。
▼第1回 Life Design Art コンペティションについてはこちらの記事をチェック

「継続すること」がコンペへの信頼につながる

――まずは、第2回LDAコンペティションの開催が決定したと聞いた時の率直なお気持ちについてお聞かせください。

町田先生:
素直に嬉しかったです。こうしたコンペは、継続することで信頼度が高まり、認知も広まると思っています。
実際、これまでにも、回を重ねることで、周囲への伝わり方や反応が変わったと感じた経験がありました。
だからこそ、今回第2回が開催されると聞き、第1回に携わらせていただいた者としてとても嬉しかったですし、周囲の方たちからも喜びの声が聞かれました。中には「前回は出せなかったけれど、今回は挑戦してみたい!」という意欲的な声もあり、このコンペの魅力が認知されていることも実感しています。

作品が誰かの暮らしの中で生きていくことが「LDA」の魅力

受賞・入選作品は「グランクレール」シリーズに収蔵され、設置されます。

――「LDA」ならではの特徴や魅力についてはどのように感じていますか?

町田先生:
多くの作品コンペの場合、選出された作品は、展覧会などで展示されることが一般的です。展示後は、美術館に納められたり、個人のコレクションとして飾られたりしていることがほとんどだと思います。
一方で、「LDA」は、作品を手がける作家と、その作品がある空間に住まわれる方たちの生活の双方を知ることができるプロジェクトです。そうした両者の関係性​が、このコンペの特徴であり大きな魅力です。

例えば、とある作品が、個人のコレクションとして生活空間に飾られていたとしても、作家自身がその作品がどのような生活空間の一部になっているのかを知る機会はほとんどありません。
ですが、「LDA」を通してシニア向け住宅に設置されると、自分の作品が誰かの暮らしの中で生きていくリアルを共有することができるんです。こうしたコンペは、私のように長年作家として歩んできた人間にとっても未知の領域を知る貴重な機会になっていますし、若いアーティストにとっても刺激が多く、とてもプラスになる企画だと感じています。
特に、シニア向け住宅にお住まいのご入居者の方々にとって、若いアーティストは、普段あまり出会う機会のない存在だと思います。普段は接点のない方たちが手がけた作品と、日常の中で出会うことができることも、このプロジェクトの面白さなのではないでしょうか。

――アーティストにとって、自身の作品がどのような生活空間に飾られていて、そこに暮らす方がどのような反応をされるのかを知る機会はあまりないものなのですね。

町田先生:
そうですね。私自身も、個人の方が所有されている私の作品が、どのような空間に存在しているのかはほとんど知りません。
自分の作品のその後を知れることは、アーティストにとっても非常に稀で、貴重な経験かもしれません。若いアーティストの方々にとっては、願ってもないほど貴重で幸運な機会だと思います。

第1回を経て認知が拡大。学生たちにも広がる「挑戦してみたい」の声

――実際に指導されている学生さんや若いアーティストからの「LDA」に対する印象や反応はいかがですか?

町田先生:
「LDA」は、チャーム・ケア・コーポレーション社主催の「アート・ギャラリー・ホーム(AGH)」というアート公募事業を参考としてプロジェクトを立ち上げました。
「AGH」の作品選考に外部の審査員が加わった初回には、コンペの意図がまだ学生たちに十分には浸透しておらず、応募に慎重な姿勢も一部に見られました。

しかし、「AGH」での実績を経て、さまざまな分野の先生方が審査員として加わったこともあり、少しずつ認知が広まっていきました。中には、「出品してみようと思います!」と直接伝えに来てくれた学生もいます。
「AGH」で入選した学生からも「2回目もやるんですよね?」と意欲を示す声が挙がり、その学生は、表彰式で見た景色が「自分の新たなステップにつながる象徴的な場面になった」と、非常に思い出深く語ってくれました。

学生たちのネットワークは、私たちが思っているよりもはるかに強いので、先輩から後輩へ、受賞・入選者から希望者へ…と、どんどん口コミが広がって「コンペティション応募にチャレンジしようかな」と思ってくれている学生が増えているように感じます。

「LDA」は、AGHの源流を汲んだアート公募事業であるためか、学生や若手アーティストにも情報が広がっていて、昨年の初回開催時でも反響が良かったように思います。このプロジェクトの信頼度が高まっていることを感じます。

シニア向け住宅だからこそ「対話できる作品」を選びたい

――第1回に引き続き、第2回LDAコンペティションの審査に携わるにあたって、どのような審査基準で選定することをイメージしていますか?

町田先生:
第2回は、「居場所の記憶」というテーマで公募しますので、もちろんテーマも踏まえた審査をするつもりです。ただ、それだけでなく、「もっとこの作品をよく見たいな」と心に触れてくるような作品を選びたいですね。
技術だけでなく心に触れる何かが作品から感じられることも大切ですし、かといって、ハートが強ければ技術がなくてもいいというわけでもありません。
私は、学生たちに、よく「自分が怖いことをしなさい」と言っています。守りに入るだけでなく、粗削りでも失敗してもいいから、少し怖いことに挑戦して作り上げた作品は、何となく心に触れる片鱗があるものです。
もちろん、技術や完成度の高さは大きな武器になりますが、たとえ完成度が低くても「自分にとって怖いものと向き合ったんだな」と伝わる作品には惹かれるものがあります。

――作品を選定される際は、シニア向け住宅に飾られることも意識するのでしょうか?

町田先生:
第1回の際は意識しましたし、第2回でも意識するつもりです。
「LDA」には、若手アーティストの育成支援という目的もありますが、シニア向け住宅にお住まいのご入居者の方々の生活の充実につながる作品であることが前提です。
若手アーティストの作品には、内面的な葛藤や屈折した表現が含まれているものも多くありますが、ご入居者であるご高齢者の方々の中には、辛い経験を思い起こさせるような表現を、あえて求めない方もいらっしゃると思います。
これまでさまざまなご経験をされてきた方々にとって、インパクトの強い表現やネガティブに感じられるような表現の作品は、きっと別の場で展示する機会があると感じ、第1回コンペでは選出しませんでした。

だからといって、ただただ優しく穏やかな作品を選べば良いというわけではありません。あくまでも対話ができるような作品を選びたいと思っています。
例えば、同じ作品であっても、昨日は「おはよう!」と語りかけてくれているように感じたのに、今日は別のメッセージを感じるということもあると思います。そのように自然と対話がイメージできる作品を選びたいですね。日常の中にそんな作品があることで、気分が落ち込んでいても、いつもの感覚に戻るきっかけになるかもしれません。
そんな懐の深い作品がこのコンペには合っていると思っています。

日常の中でアートに触れることが、新たな気づきや心の豊かさにつながる

――最後に、この記事をご覧になっている方や、作品の応募を検討されているアーティストの方に向けてメッセージをお願いします。

町田先生:
シニア住宅や介護住宅で働く方々は、日々ご入居者の方々の小さな変化を注意深く観察し、敏感に察知しながらケアされていると思います。それだけに、時には気を張るような思いをすることもあるでしょう。
そうしたスタッフの方々が、日常の中でアートに触れることで、新鮮な気持ちになったり、ポジティブな発想が生まれたりするきっかけになるといいなと思っています。
特に、このプロジェクトで選出される作品は、同じ時代を生きる中で生み出される作品ですから、きっと作家の息吹のようなものも感じられると思います。世代の近い方は共感するかもしれませんし、ベテランの方にとっては新鮮さを感じられるのではないでしょうか。作品を通して、同じ時代を生きる多世代の人々とのつながりを日々感じられる環境は、とても貴重だと思います。

また、応募を検討されるアーティストの方々には、ぜひ受け身ではなく前を向いて積極的に参加してほしいです。
学生さんや若いアーティストにとって、コンペへの出品は緊張もするでしょうし、ある意味大きな冒険にもなるでしょう。でも、評価や結果ばかりに気を取られずに、「自分の作品が他者の暮らす空間で、誰かとともに生きていく」ことの意義や価値を感じながら前向きにトライしてもらえたら嬉しいです。
ご入居者の方々は、若い世代には想像もつかないほど、豊かな経験や感性をお持ちの方ばかりだと思います。そうした方たちに見ていただいて、共に生活していく作品を手掛けるという喜びを感じながら作品づくりに励んでいただけたら嬉しいですね。

――第1回に引き続き、また新しい才能が見出されることもとても楽しみですね!貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

※本記事に掲載されている情報は、2026年9月28日時点の情報です。

第2回コンペティションの作品応募期間は【2026年10月13日(火)~11月29日(日)】
下記のリンクからご応募ください。皆様からのエントリーお待ちしております。

関連する記事

関連するキーワード